こたつむり

インビテーション/不吉な招待状のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.6
♪ 何処に行けばいい 貴方と離れて
  今は過ぎ去った 時間に問い掛けて

これは人を選ぶ映画ですね。
「別れた妻から届いたパーティの招待状。戸惑いながらも出席した主人公は、パーティを支配する雰囲気に違和感を抱く…」というサスペンス風味の物語なのですが…。

全般的に“物足りなさ”が先立つのです。
低予算だからか舞台は限定的(別れた妻の家の中だけで展開)ですし、物語のメリハリも極力抑えた形。しかも、説明描写が最低限なので、登場人物の個性も際立つことはありません。

でも、これが製作者の意図なのでしょう。
全方位に向けた作品に仕上げるのではなく“刺さる人”だけに特化し、その狙った層の琴線に触れることが出来ればよい…と割り切った結果だと捉えました。

何しろ、テーマは“救済”。
全員を等しく助ける…なんて神様だって出来ない代物。十人十色の価値観を真ん中に据えた時点で、賛否両論の結果は予測できる話です。

しかも、現実的な手触りを重視。
劇中で“あるビデオ”をパーティ出席者で眺めますが…虚構としての刺激など皆無であり、むしろ本当に存在しそうな“つまらなさ”に満ちていました。興味がなければ確実に眠る案件です。

だから、コア層は三十代から四十代と推定。
家庭を持ち、子供がいる(しかし成人ではない)…それが製作者の狙っているところ。あとは“何かを喪失した意識”が強ければ言うことなしですね。鼻の奥がツンとするかもしれません。

まあ、そんなわけで。
ドキドキハラハラのサスペンスを期待すると肩が下がる物語。髭を生やして世捨て人のような主人公と同様に、表層は“あえて誤解を招く”意識でコーティングされている…と踏まえたほうが吉です。

そして、その意識で臨むことができれば。
恐怖と哀しさを感じる着地点を評価できるかも。というか“あの風景”が物語よりも先にあったのでしょう。根底にある意識は普遍的なものでも、小道具一つで捉え方が変わる…そんな良い見本だと思いました。
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