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愚行録のhayatoのレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
3.7
おすすめに出てきたので気になって観賞。
原作未読。

そんなに元気じゃない時に観る映画じゃなかったと後悔。ある程度予想はしてたけど、とにかく終始全体的に暗いし重い。タイトル通り人間の愚かな部分をこれでもかってほど見せられる。

一年前に起きた一家惨殺事件を追う記者の主人公(妻夫木聡)。関係者の証言から浮かび上がってくる理想と思われた夫婦の本当の顔。
それと同時進行で描かれる問題を抱えた主人公の妹(満島ひかり)。

とにかく出てくる登場人物全員嫌い。でも人間って確かにこんな生き物だよなって思っちゃうから尚更ずしんと胸が重くなる。

冒頭のバスのシーンで、お年寄りに席を譲ってあげろと注意された主人公が、わざと足の悪い人の演技をするんだけど、その時点でもう嫌だなって嫌悪感を抱いたと同時に、人間の醜さを存分に表したその演出に凄く惹き込まれた。

とにかくキャスト全員演技が上手すぎるから、途中本当にこの人はこういう人なんじゃないかって思ってしまう。
特に主演の妻夫木は終始目に生気がなく、空っぽな表情で主人公の内面の虚無を見事に表現していた。やっぱりこの人の演技は凄い。画面を超えて彼の抱えている憂鬱がこっちまで伝染してくるみたいだった。

そしてその妹役の満島ひかりの演技力もバケモノで、幼さや無邪気さが残る表情に、時折深い影が射す様子が観ていて怖かったし、ラストの独白のシーンは鳥肌が立った。二人の演技力に脱帽。

救いがないラストに思わずうわぁって呟いちゃったし、観終わってしばらくはずんと気分が沈んでいた。
元気な時に観るのがおすすめ。

「希望さえも打ち砕く、悪魔みたいな生き物がこの世にはいるんです」
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