ごてふ

マンチェスター・バイ・ザ・シーのごてふのレビュー・感想・評価

3.9
渋谷の怪しきホテル街に隣接する劇場にて開催された洋画の試写会に参加。入場の列には字幕翻訳の大御所の姿も。今年度アカデミー主演男優と脚本賞を獲った話題作に会場は満員御礼、と云いたいところであるが170席程度の劇場が満席にならない。まぁその内容の暗いこと地味なこと。ドンヨリと草臥れた中年男が故郷へ帰るのだが・・・。説明的な科白もなく時間軸を行き来する淡々とした進行に20分程戸惑うが、徐々に明らかになる男の過去に固唾を呑む思い。死んだ兄とアル中から脱した義姉、難しい年頃の甥っ子、会えば気まずい元妻などなど、どこかに傷を負った者たちの間を迷い悩み彷徨する主人公。人生の歯車は何処で狂うか判らない。それでも吾も我が隣人も生きてゆかなくてはならない。シナリオも書いた監督の眼差しは冷徹なようで随所にユーモアもあり、実は暖かい。年季の入ったオトナほど感じ入るだろう知的で思慮深い佳作でありました。
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