Masato

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命のMasatoのレビュー・感想・評価

4.0

ジャパンプレミアにて

生きる女神こと(勝手に呼称)ジェシカチャスティンが登壇しました。40歳なのに素晴らしい美貌。彼女はアーロン・ソーキン監督作「Molly’s Game」で今年のアカデミー主演女優賞ノミネート有力候補です。

ホロコーストを題材にした映画は軒並み良作が多い印象です。今作も良作にあたります。

印象としては「ホテルルワンダ」のホロコースト版。「ホテルルワンダ」ではジェノサイドが行われている中でホテルのオーナーが虐殺の対象であるツチ族をホテルに匿った実話でした。今作はホロコーストの最中、動物園にユダヤ人を匿う動物園長夫婦の本当にあったお話。

「ホテルルワンダ」と「ユダヤ人を救った動物園」の共通点は、匿った張本人はごく普通の人間ということ。権威のある人でも、とてつもない才能を持っているわけではない。だから、ナチス相手にどうすることもできなく、脅威に恐れを抱き、ただただ脆い。原題の「Zookeeper’s Wife」はそれを強調させている。

自分が主人公のアントニーナだったらどうだろうか?近くにはユダヤ人の死体が転がるゲットー地区があり、家の目の前にはナチスの兵士が巡回している。脅威が目の前に存在する中で、もし私がアントニーナであったら、匿うことすら愚かそんな場所一目散に逃げてしまうだろう。

アントニーナは私たちと同じ普通の人間ながらも、他の人よりも物凄く長けていたものは、生存本能に打ち勝つ「勇気」と「慈愛」である。
ヒーローのように強大なパワーを振り回して戦うことはできない。現実世界でいう「強い人間」とは、アントニーナのような人物であるということをこの映画は教えてくれる。

映画の内容は単なるドラマとして描くことはせず、バレるかバレないかのスリラー的要素も含ませながら、キッチリと全てを描ききっている。終戦が近づくにつれ、アントニーナたちはどうなっていくのかに惹きこまれてグイグイ引っ張ってくれる。
戦争に関わる描写は、決して手を抜かずに意外と丁寧に作られていた。

惜しい点として、彼女がそこまでユダヤ人を匿う行動原理をもっと深掘りして欲しかった。そして、匿われているユダヤ人たちのエピソードを増やして欲しかった。そうしたら、もっと感動できたと思う。


ジェシカチャスティンは先日公開の「女神の見えざる手」で巧みなロビー戦略を展開する兎にも角にも凄まじい役を演じた。とにかく早口で強そうに見える彼女だったが、今作は一転して優しい口調で丸みを帯びた女性らしい役だった。ここまで役の振り幅を変えられるとは、さすがオスカーノミネート女優。


余談:ポーランドのワルシャワが舞台なので、ロマンポランスキーの「戦場のピアニスト」などでポーランドのユダヤ人の状況を知ると良いです。
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