世界が変わることを信じ、朝鮮の独立を目指して目的を果たせなかったモンギュと、世界が変わっても自分の詩は変わらないことだけを信じてきたドンジュ。生まれたときから同じ家で暮らした従兄弟同士ながら、正反対の生き方をしたふたりが迎えた結末は、皮肉にも同じものだった。
治安維持法による不当な取り調べや人体実験については観ている側も苦しくなるが、完全な反日映画と捉えるのは難しい。ドンジュが通った立教大学の教授に対しては作り手の敬意を感じるし、非情な特高刑事もどこか苦悩しているように見える。
(韓国人俳優が日本人を演じているので、どうしてもセリフに違和感はあるが)
それぞれの心情をとても丁寧に描いた作品だった。そしてそれを彩る詩の言葉が本当に美しかった。
この時代でなければ、と悔やむ気持ちは、劇場にいた人みなが抱いていたのではないだろうか。