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ブレードランナー 2049のがんちゃんのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.5
『ブレードランナー』でありながら『ブレードランナー』でない、前作に敬意を払いつつも見事に前進してみせた意欲作。ドゥニ監督がんばりました。

■時代がブレードランナーに追いついた
SF映画の魅力は「未来の選択肢」を提示することにある。その点で前作『ブレードランナー』で描かれた「マッドマックスほど暗くないけどスターウォーズほど賑やかでもない未来」の表現は画期的だった。その結果デジタル看板広告が普及した。池袋駅では無数の永作博美が俺に即日融資を呼びかけてくる…
『2049』はあくまで前作の世界観をベースにした「続編」ということもあり、前作ほど「こんなの見たことねー!」という表現は少なかったように思う。
というか本作はむしろ、IoT、VR、ドローン、環境問題といった「今まさに起きていること」の延長を描いている。『ブレードランナー』の影響によって現実世界が改変され、その結果生じた乖離を続編にフィードバックさせて作品世界が補完された、というのは決して言い過ぎではない。

■レプリカントとかもう古い?
前作から35年を経て、『2049』でどうしても扱わざるを得なかったであろう重要テーマが「AI」だ。本シリーズはもともも人類とレプリカント(人造人間)の争いを描いた物語であるから、「AI」という第3の存在は物語上は不要、はっきりいって蛇足なはずであるが、 実はこれこそが『2049』の裏テーマだと思われる。
AIとの恋愛を描いた作品といえば『her 世界で一つの彼女』だが、あれはキモい童貞がスカジョボイスのワガママAIに振り回される辛い話。しかし『2049』のホログラムAI=ジョイはご主人にどこまでも献身的で決して裏切らない。しかもお相手は今をときめくイケメン俳優ゴズりん。AIとイチャコラしてても絵的に全然気持ち悪くない!メラメラと湧いてくる所有欲。今すぐラオックスへ買いに走り出しそうなレベル。
寒冷化によって雪が降り、海抜上昇によって防護壁で囲まれたディストピア世界で生きる者の唯一の癒し、それはVR。『ターミネーター』や『マトリックス』のような「人工知能に支配された未来」という描写は過去のものになる。これからは「人工知能と共存する時代」がくるはずだ。『2049』はAI&VR推進映画である。
ちなみに自分が本作で1番好きなシーンはジョイからとあるデータを外部デバイスに保存してほしいと頼まれたKが「そんなことしたらデータが消えちゃうよ!」と焦るのに対し、「それがいいの」と望むシーン。クラウドが一般化している時代ゆえの切ない会話。
あとなんか『エクストリームラブプラス』が流行った頃にNDSをバイクのタンクに括り付けて寧々さんと旅に出てしまったやつの話を思い出した。

■本日のイルミナティ
・本シリーズにもとうとう「サイボーグ」が登場した。ウォレスという盲目の男。四方に展開されたドローンを通じて視覚情報を脳へ直接送っていると解釈できそうだが、このような機械化人間は現実世界にも登場してくるだろう。

・農業を掌握したウォレス社が「タンパク質」として栽培していたのが…昆虫は生産性の高いタンパク源としてシリコンバレーが注目している。似たような描写が韓国のイルミナティ喧伝映画『スノーピアサー』でも見られた。肉が食えるのも今のうちかもよ…
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