言葉にならない。
圧倒された映画だった。身体に響く重低音と雨の映像が続く2049年の退廃した地球が舞台。陰鬱な雰囲氣だ。人間に代わる労働力として人造人間(レプリカント)が開発されたが反乱を起こしたため、それらに代わる従順なレプリカントが製造された。旧型のレプリカントを抹殺する使命を与えられたブレードランナーK。
物語は、Kの使命から次第にKの生い立ちを探るストーリーに変わっていく。Kはレプリカントではなくて魂を持った人間なのか…?
旧型のレプリカントを抹殺する事がKの目的だったが、隠された秘密を追うに従って自分の存在が揺らいでいく。
Kの唯一の心の拠り所がホログラムの恋人ジョイ。Kとジョイの間で交わされる時間は甘くて優しい。それがKの孤独な闘いを際立せている。身の危険が迫ったK。これが最後かもしれないという時、人間の女性に同期したジョイと身体を重ね合わせる。切ないシーンだった。
闘いの末に行き着いたところは、冒頭で自分が殺した旧型のレプリカントと同じような氣持ちだったとは…皮肉というか、最後の最後まで自分以外の者のために闘ったKを思うと涙がこみ上げてくる。雪の上に倒れたKは美しかった。
研究所の博士がKの記憶をみて涙を流していた理由は、そういう事だったのかと後になって腑に落ちた。
それにしても怪力ラブは、恐ろしかった。なんとしてでも相手を仕留めようとする執念と気迫が込められた表情は見事だった。