黒川

ブレードランナー 2049の黒川のネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

前作の世界観ちゃんと踏襲されてる上に原作、果てはPh.K.ディック本人のバックグラウンドまで織り込んできてるじゃん!凄い!!前作観てからもう一回劇場で観たい!!!

2049年、レプリカントの製造が再開され、従順なものが人間により使われる近未来。レプリカントの警官Kは逃げ出した旧型の始末へ向かい、その庭に埋められた箱を見つける。箱の中に入っていたのは女性の人骨で、彼女には出産経験があった。レプリカントであるにも関わらず。

ここまで観て(最初30分位)「ほーん読めたで」って思ったら色々覆された。読めたと思わせといて固定観念覆してくるやつ。なんであんたも泣くのってのが繋がった時の驚きとKのやるせなさとラストの切なさが良かった。木馬と孤児院の記憶、実際にその場所にあった木馬、造られた記憶と実際の記憶。

Ph."K".ディック(彼のミドルネームはKだ)には双子の妹がおり、彼女が生後40日で亡くなったことは、彼が歴史的if物語を多く書くことになる切っ掛けになったとずっと勝手に思っている。過去が少しでも変われば未来は違うものとなり、登場人物の誰かは居なくなるのではないか?「流れよ我が涙、と警官は言った」や「ユービック」ではそれが顕著だ。彼女ではなくディックが死んでいたら?彼らの立ち位置が逆だったら?彼の存在が死んだ妹に取って変わられたら?彼が女で妹が男として生まれていたら?そのような不安や妄想に彼は駆られいたと思う。レイチェル(前作では暈されてたけどやっぱアンドロイドやったんやな)が産んだ子供の遺伝子情報は男女の2つ分登録されていた。そして彼ではなかった。最後まで造られ存在だったKの最期。 造られた存在が初めて自分が生まれてきたと思った時、その痛みは本物の痛みになったが、最後の瞬間の虚空を見つめる瞳と脇腹の傷が与える絶望と痛みだけは現実なのだ。Kの様にディックもそんな空虚を感じていたのかもしれない。

絡む旧作の人間模様が薄いようで実はとても濃密だった。一応これだけでも一つの作品として観ることができるが、観ていたほうが絶対良い。

でも残念な部分もあって、ジャレッドレト全然仕事してないし、前作のようにアイコニックな美男美女が出てくるわけでもない(ルトガー・ハウアー見たかったよね)。そしてあれだけやっといて薄味に着地してる感じもある。もっと続くと思ったぞ。あと、長いから2001年宇宙の旅みたいに途中で休憩入れてくれ、5人くらい途中でトイレ行ってたわ。隣の人寝てたし。

でもAI彼女起動するときの「ピーターと狼」とか色々気になる部分たくさんあるからまた原作読んだり前作観てから観たい。見るからにソ連的な冒頭の風景と序盤Kの家にあったソローキン?っぽい本、あれもなにかわかるといいな。
黒川

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