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カフェ・ソサエティのemilyのレビュー・感想・評価

カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)
3.7
 1930年代のハリウッド、映画業界で働くことを夢見るニューヨーク生まれの青年ボビーは業界人の叔父を頼ってハリウッドへやってくる。そこで叔父の秘書であるヴォニーに出会い恋に落ちる。しかし彼女には恋人がおり、なんと既婚者だと言うが・・

 オレンジ色の色彩、華やかな1930年代を思わせる衣装に、おなじみの軽やかな音楽が常に寄り添い、恋愛、人生における皮肉と運命をユーモアと小ネタを混ぜながら華やかさと儚さをウディ・アレン節にのせて描く。

 華やかな衣装もさることながら、ボビー演じるジェシー・アンセンバーグの喋り方や表情、立ち振る舞いが非常に味があってよかった。セリフ自身も哲学的でありつつユーモア満載でセンスを感じられるが、彼が喋れば独特のトーンと間の取り方が非常にコミカルで、愛らしさを漂わせる。特に娼婦との会話の発展の仕方がいい。その後何の物語にも絡みがないのだが、不器用同士の会話を前半に見せる事で、彼の人となりがしっかり描写されている。

 ボビーの兄や家族の描写がまたラブストーリーに良いスパイスを与え、軽快な人殺しや改宗、ユダヤ人ネタなど、濃厚だがコミカルに埋め込み笑いの枠の中でブラックユーモア満載で挿入されている。

  過去の恋は年月と共に美化され、良い思い出として成長していく物だ。その人物が目の前に現れたら、心は揺れ動くだろう。人生は選択の連続で、それが正しいかどうかなんて誰にも分からない。自分が思い込むしかないのだ。人を傷つけ勝ち取った恋であれば、やはりその代償は大きく自分もしくは自分の大事な物にのしかかってくる。人生とは驚きと皮肉の連続で、誰かの罪が誰かを救うこともあるし、その逆もあるのだ。

 選択したのは自分だ。後悔してももとには戻らない。大事なのは今それをどう受け止めどう行動するかだろう。幸せは自分がそう思えばどんな状況でも叶うのだ。
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