わたふぁ

ありがとう、トニ・エルドマンのわたふぁのレビュー・感想・評価

4.0
落語のような教訓的なオチがある笑いを日本人は好みがちだから、このナンセンスな笑いは真似できるものではないなぁとつくづく。外国の映画を見るということは異国の人の知らない気質に触れることでもあるんだなぁと気付かされた。トニ・エルドマン、私からもありがとうを。

父ヴィンフリートは悪ふざけが大好きで、日常的にヘンな化粧で人を驚かせたり、配達人にちょっとした嘘をついたりしている。可愛がっていた愛犬が死んでしまって、寂しさを紛らわすためか、離れて暮らす娘イネスの家に突然訪問する。コンサルタント会社でバリバリ働く仕事人間のイネスには迷惑な話。仕事場に来られた日には逆参観日のような状態に。悪いと思いながらも父親には帰ってもらうことに...。

しかし一息ついたイネスの前に、謎の男、トニ・エルドマンは現れる。なんだかとてもガサツな男である。

エルドマンはイネスを従えて、自分はドイツ大使だと嘘をつき、パーティで少し話しただけの知らない人の家を訪問。家族や友人が大勢いる中、伝統のイースターエッグの作り方を習うのかと思いきや、ただ世間話をし、突然の訪問で失礼をしたから最後に「秘書が歌います」と言って、自分は鍵盤を弾き、イネスに歌わせる。イネスはイネスで捨て身で熱唱するから面白い。

しかしイネスがこれまで築き上げてきたライフスタイルは見事にぶち壊されていく。神出鬼没のトニ・エルドマンのせいで。

そして怒りが一周まわったら人間は最後こうなるのか。イネスの誕生日パーティのドレスコードがなんと「全裸」に決まる。これも仕事だからということで上司も部下も真っ裸での立食である。とても愉快、愉快だ。

ありがとう、トニ・エルドマン。