チッコーネ

午後8時の訪問者のチッコーネのレビュー・感想・評価

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
4.0
周囲から少しずつスポイルされた結果、命を落とした少女。
本作の面白さは、その一端を担ってしまったヒロインが、事の重大さを理解しただけでなく、医師としての本質へ回帰したことにある。
その過程をゆっくりクライマックスに落とし込んでいくのではなく「即座の変化」として描いている点がユニークで、観る者は後に来る「好転」を目の当たりにするのだ。
ここ日本でも、診療を時間決めサービスのように捌く、高度資本主義に毒された医師は数多いが、ヒロインは事件後に大病院への配属を辞退し、診療所に住み込むかたちで、地域医療へ埋没していく。
往診の中で患者からの謝意や日々の糧(診療費だけでなくパンや菓子)を受け取る姿は、高潔そのもの。
また彼女のわずかなプライベートタイムを覗き見れる描写が、思いのほか楽しい。

サスペンス要素はどちらかと言えばギミックの範疇だが、退屈せず全体を見進めるのには役立つ。
木で言えば「幹」ばかりを描くことを重視してきた監督が、いま一度映画の構成要素を見直したのか?
これもまた「変化」として評価すべきだろう。