ありふれた日常、市民たちの平凡な日々を綴ったにすぎない物語というのが良くも悪くもこの作品の素晴らしさなのかなと。
この物語、日本の限界集落の大工のお爺さんと市町の通り一遍な無自覚行政担当者を題材にしてたら誰がみるのかしら?
『おみおくりの作法』と『アイ・アムまきもと』をみた時の感覚に非常に酷似した虚無感しかなかった。
結局、民主主義と資本主義の矛盾とそこに潜む搾取された側の悲痛な叫びと、それを自責の念と自己満足で愛でる搾取している側のニーズのマッチに過ぎないって言う皮肉すら感じる作品だった。
小さい頃から日本の社会制度も福祉保障も欧米に比べれば…というビバ欧米というか、比較対象として欧米を引き合いに出せば良しとしていた人達に、海外にすら行ったことのない自分は忍し黙るしかないこととあったけど、大人になってみればどの国も大差ないというか日本はまだましと言うべきなのか?
絶対的な知識量も海外経験もないけど、江戸文化や明治、大正文化に触れるにつけ、海外を礼賛する気にはどうにもなれないモヤモヤとした葛藤が、こういう作品に触れると確信に近づく。
モダン・タイムズから何年?
いつまでやってんだろう、人類。
あとは心に刺さったラストのセリフのメモなのでネタバレ注意で。
私は依頼人でも
顧客でもユーザーでもない
怠け者でもたかり屋でも
物乞いでも泥棒でもない
国民保険番号でもなく
エラー音でもない
きちんと税金を払ってきた
それを誇りに思ってる
地位の高い者にはこびないが
隣人には手を貸す
施しはいらない
私はダニエル・ブレイク
人間だ 犬ではない
当たり前の権利を要求する
敬意ある態度というものを
私はダニエルのブレイク
1人の市民だ
それ以上でもそれ以下でもない