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わたしは、ダニエル・ブレイクのkenのレビュー・感想・評価

4.2
ダニエルは心臓発作を患い大工の仕事をドクターに止められた。国から援助を受けるべく福祉事務所や職安に出向き色々と手続きをしようとするが、複雑な制度により進展しない。

職員とその上司も貧しい人々を冷遇し、融通の効かない対応をする為、観ていて腹立たしい。英国の社会福祉制度は援助しない為の仕組みなのかと思える程だ。しかし、ダニエルがシングルマザーのケイティと2人の子供を助ける為に職員に言い放った一言は実にスカッとした。職員達にあるべき姿勢を要求したもので、その勇気ある行動は賞賛に値する。

ダニエルも収入が途絶えて貧しいのだがケイティ達を支援しながら寄り添う姿には感銘する。自分も食べていけるかどうかの状況で他人を助け思いやる心は、同じ境遇に置かれた弱者にしか、その辛さや悲しみは真に分からないだろう。

キャメロン元首相の英国政府が福祉予算を大幅にカットして緊縮財政政策を敷いた結果の実態で、本来弱者を助けるべき福祉制度が理不尽な仕組みとなり、人々をより貧困な状況に追い込んでいる。

庶民の怒りを見事に代弁し、政権を強烈に批判している本作は英国政府関係者だけでなく、日本の政治家をはじめ多くの人に是非観てほしい映画である。フードバンクでケイティが本能のままとった行動、国の援助を求めて裁判で闘おうとして還らぬ人になったダニエルの姿が忘れられない。
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