まちだ

Every Dayのまちだのレビュー・感想・評価

Every Day(2016年製作の映画)
4.5
「時間をもらったのね、一週間。」
交通事故で昏睡状態になった恋人の咲が主人公の前に現れるところから物語は始まる。
「恋人を事故で失う」という何度も何度もみたような設定なのだけど、この作品は生きている誰かが死んでしまうから、居なくなるから悲しい、という感覚とは少し違う。
そうではなく、まぶしいほどの日々の奇跡は、常に死と表裏一体で背中合わせなのだということを強く提示しているように思った。だからこそ何気ない言葉や日々の営みが祈りのように思えてくる。


あと何回大切な人に「ただいま」と言えるだろう?「おかえり」と返せるだろう。
その日々の終わりは何十年後かもしれないし明日かもしれない。

今日は必ず昨日になるし、同じような明日はもう来ないかもしれない。
たいてい失ってから大切なものの本当の意味に気付くし、
大切なものはどんなに大切にしても、足りないのだ。

大切な人に出会えた幸せを噛みしめるには人生は短すぎる。
人生は残酷だし、人間は悲しい生き物だ。でもだからこそ、
「神様からもらった」限りある時間が少しでも輝くように生きていくためには、死への怖れを抱えて生きていかなければいけないし、それから逃げてはいけないのだと思う。


後で知ったのだけど監督は病気で目の障害を追いながらも8年かけてこの作品を作り上げたらしく、
死を意識しながら作ったらしい。なんだかすごく腑に落ちた。もちろん死を身近に感ているからこその希望なのだけど。

あと印象的に流れるピアノ、わざと音質落としたノイズ混じりのものを使ってるみたいで、そのザラザラした質感、生々しさ含めとても世界観にあっていたと思います。
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