グラッデン

ハクソー・リッジのグラッデンのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.1
実話に基づく物語、戦闘シーンの火力も凄まじいものでしたが、鑑賞を終えて戦争映画を見たという感覚は薄かったかもしれません。

その理由は、本作が主人公の貫いた「信念」にフォーカスした作品だったからだと思います。

日本人の目線で見れば、日米両軍の描写を含めて、作中における戦争観に対しては若干危ういバランスを感じましたが、主人公の戦場での行動に正義や大義を掲げることなく、あくまで個人の「信念」を体現する位置付けを崩さなかったのは良かったと思います。

上記の視点に立った場合、訓練中に遭遇する理不尽な要求や葛藤、沖縄で遭遇した敵=日本軍の描写も、己の信念に立ち塞がる試練のような位置付けにも見えてきました。

戦争映画において個人の精神にフォーカスした作品自体は少なくはないと思いますが、宗教的な倫理観を絡めたケースは珍しいのではないかと。

殺生の駆け引きが至る所で繰り広げられる混沌と主人公の混じり気のない信念が同居する戦場の構図に息を飲まずにはいられませんでした。