きょんちゃみ

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガールのきょんちゃみのレビュー・感想・評価

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【『素晴らしい日々』を巡る2つの解釈】

「君は僕を忘れるから、そうすればもうすぐに君に会いに行ける」

⑴【「時が蟠(わだかま)りを風化させてくれる」という解釈】
 人には物事を記憶するだけでなく、忘れる力がある。忘れる力がもしもなかったら、嫌なことを全て覚えていることになり、人生はいつも暗くなるだろう。なぜなら、人生に起きる出来事は、楽しい出来事より、つらいことの方が多いくらいだからだ。老いること、病気、人が死ぬこと、別れること、全てつらいことである。しかし、そういう傷を時間が癒すということもある。愛し合うひとたちが別れる時、ひどいことをつい言ってしまって、相手との間に長い時間消えないわだかまりを残すこともある。しかし、そういうわだかまりを時間が消してくれるということもある。そうなれば、また会いに行ける。だから、この歌詞は、「時間が経てば自分との間に起きた悲しいことの記憶が、きみの中になくなるから、そうなればまた会える」という意味だと解釈できる。

⑵【「忘れるという理由があるから会いに行けるのであって、そういう理由がないから会いに行けない」という解釈】
 例えば、学校の教室で、「近視だから黒板がよく見えない」という理由があれば、すぐに前の方の席に、席替えをしてもらえる。しかし、そういう理由がないのであれば、先生に言っても席替えをしてもらえない。それと同様に、「君が僕を忘れる」という理由があれば、すぐにでも君に会いに行ける。しかし、現実問題として、二人の関係は、人が忘れるには美し過ぎる。だから、「僕」が「君」のことを決して忘れられないのと同様に、「君」は「僕」のことを決して忘れない。そして、「君が僕を忘れる」という理由がないのだから、君には会いに行けない。「君」がこんな「僕」のことを覚えているうちは、「僕」には「君」に会わせる顔がない。しかし「君」は「僕」のダメなところだけでなく「僕」と過ごして楽しかった思い出までをも含めて、覚えているはずだ。お互いに問題はあったけど、二人で過ごした日々の思い出は、二人の中で一生消えることなく輝き続ける宝物になった。だから「君」は「僕」を忘れない。だから、この歌詞は、「忘れるという理由があればこそ会いに行けるのであるが、しかしそういう理由はないのだから、もう会いに行けない」という意味だと解釈できる。

【参考音源】
https://youtu.be/i6Vb9VqRwnE?si=L7h97tRZwG57aZDx
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