そらそいの作品情報・感想・評価

「そらそい」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

伊豆で開催された映画祭で観た作品。
映像ソフト化されておらず、ベルリン国際映画祭以外、国内でもほとんど放映されていない。

ダンスサークルの学生たちが伊豆に合宿に来たというストーリーの青春群像劇。
それは設定であってストーリーじゃないじゃん!というご指摘、まさにその通り。
この映画には大したストーリーなどないに等しい。

作品を観てから随分あとに知るまで、私はこの作品を本物の大学生サークルか何かが自主制作したレベルの映画だと思っていた。
正直なところ、ストーリー云々に達する前に挫折してしまう出来だったからだ。
シェイクスピアの不朽の脚本であっても、幼稚園児のお遊戯会でされてはストーリーは楽しめまい。

またさらに悪いことに、(幼稚園児ならともかく)ある程度の歳の仲良し集団がわいわい楽しくやっているようなヌルめのノリが、鑑賞者の心をどんどん引き離す。
頑張らない「自然体」「ありのまま」の演技にはメリハリが皆無で、ダラダラと文字通り「群像」を垂れ流されるのは苦行だ。

キャストには若き日の二階堂ふみがいたようだが、語るべきところなき「群像」の一人に成り下がっていたことは想像に難くない。
当時の私は彼女を知らなかったが、少なくとも作品の大きすぎる欠点をも凌駕する個性の存在は記憶にない。

本作を観たあと、同じ石井克人監督の同時期の作品である「山のあなた〜徳市の恋〜」を観たが、(たった二作品の比較対照ではあるが)言葉に頼らないメッセージを撮りたかったのではないかと感じた。
確かに「そらそい」もダンスサークルという設定を活かそうとしてか、かなり独特な身体表現を使っていたような気はする。

「山のあなた〜徳市の恋〜」も大きな起伏のないストーリーだが、まだ原作の力があり、キャラクターや舞台設定に個性と予測すべきバックグラウンドがあり、名のある俳優陣の力も加わって、多少なり作品に奥行きが生まれていた。
しかし「そらそい」では、眼前の〈表象〉の奥に広がるべき景色が浮かばなかった。
言葉を尽くしてもメッセージを伝えるのは難しい世界で、言葉なくしてそれを遂行するには、あまりに不足が多い挑戦だっただろう。

written by K.