くろねこヤマ子

ガザの美容室のくろねこヤマ子のレビュー・感想・評価

ガザの美容室(2015年製作の映画)
3.8
何度か見ていた予告からは

戦地であれど美容室の中は
明るく楽しく朗らかよ
を、謳っている
そんな作品だと思っていた。

違った。
無知ってヤバい。

ガザの現状は
男女を問わず職はなく、貧困で、
供給される物資に頼らざるを得ない。
治安だって飛び切り悪い。

自分たちには選択権が完全にない。
何かしたくても2つの派閥の
二重構造の検閲に阻まれて、
大きな砦の中にいる
言わば囚われのような身。
生まれながらの終身刑。

彼女たちは平気な顔をしながらも
内面は酷く疲弊していて、
すっかり心は蝕まれていたのだと

物語が進むにつれてジワジワと伝わる。

擦り切れそうな精神状態。
切れてしまった精神状態。
カメラは美容室から外には出ない。

それはもう、ガザ地区そのものなんだ。
出ないじゃなくて
出ることを許されていない。

花嫁になろうとする女性の止まらない涙に
とても戸惑ったけれど
点と点と点が線で繋がるように
彼女の真の心情を理解できた時、
こみ上げるものがあった。

イスラムの強き女性にパワーを分けて貰おう
なんて思っていたけれど
そうじゃなかった。

閉塞感すごくて窮屈だけど
とても良い映画。
知るということは糧。