Kuuta

アリータ:バトル・エンジェルのKuutaのレビュー・感想・評価

3.7
IMAX3Dで鑑賞。予告の印象以上に面白かった。

一番大きいのは、予告では馴染めないかなあと感じたアリータのビジュアルが、開始5分で納得できてしまった点。肌の質感、表情。あくびをしてベットから降りて転ぶ。人工物でありながら、少しずつ動きがスムースになっていく人間臭い挙動。実写のイド先生(クリストフ・ヴァルツ)と並んでも全く違和感ない。「人と機械の差がなくなっている」世界観なだけに、ザ・日本の漫画キャラなこの見た目に説得力があるのは、凄く大事な事だと思う。フェイシャルモーション、技術の進歩ってすごい。

序盤の畳み掛けが良い。車に轢かれそうになる子供アリータ→並の人間くらいの反応でバイクを避けるアリータ→バーサーカーアリータ、のように見た目の変化と並行させて大人の戦士への成長を描く。単純に「強い装備だから強い」のではなく、戦士としての内面の覚醒を経てスーツと自らが「同化する」。随所で台詞を使わず、アリータの動きで心情を表現している。詰め込みすぎな脚本の中でも、この部分だけはきちんと描きたい、というこだわりを感じた。戦う女を描かせたらやっぱりキャメロンは上手い。

演じたローサ・サラザールは実年齢33歳だそうで、少女らしさよりも「大人の強さ」を出したい作り手の意向が強かったのかなと思った。原作よりだいぶお年寄りになった娘思いのイド博士には、キャメロン自身が投影されている?

彼女は完全無欠の存在に覚醒していくので、映画は終盤、周囲にいる「不完全な人間」のドラマにシフトしていく。ただ、ヒューゴ(キーアン・ジョンソン)もチレン(ジェニファー・コネリー)も、もう少し踏み込んだ心情描写が見たかった。色々詰め込んだ分、この辺はかなり消化不良。

(結局下界に落ちた人間がザレムに上がることはない。絶望的な断絶を強調するストーリー。それでも夢にすがるしかないヒューゴ。チレンは娘の死という「現実」から逃げようとしていたが、アリータの存在を受け止め、母として再び立ち上がる。正気を失ったようなヒューゴのラストの展開も、チレンの改心も、説明不足に感じた。サイボーグの恋愛云々も笑っちゃうくらい雑だった)

アクションはどれも良かった。上下左右、奥行きを使った見せ方。序盤からサイボーグゆえの四肢欠損描写が連発され、緊迫感がある。特に中盤のグリュシカ(ジャッキー・アール・ヘイリー)との意地と意地のぶつかり合いは、手に汗握った。モーターボールでの、ボールの重さを生かした縦横無尽なアクションも面白かった。クライマックスで剣のアクションはもっと見たかった。

中盤から話が進まなくなるのが残念。序盤で賞金稼ぎ程度アリータは瞬殺できると明示してしまっているし、火星の体も手に入れて敵なし状態なのに、ヒューゴの話を絡めながらザパン(エド・スクレイン)にネチネチ苦しめられる、という展開にはかなりのモタつきを感じた。

楽園を追放されたイド博士とチレン。下界は混沌としたヒャッハーな世界でありつつなんだかんだ楽しそう、という不思議なバランス。ノヴァの正体はお前かーいってなった。スクリーンで見たのは久しぶりな感じがした。

文句も多くなったが、「打倒ザレム」の戦闘マシーンとして育てられた彼女が、自分の戦う理由を見出していく。この話運び自体は丁寧で、「アリータの成長譚」としては合格点なのでは。続編が実現したら是非見たい。74点。
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