Kuuta

メリー・ポピンズ リターンズのKuutaのレビュー・感想・評価

3.6
実写化と続編ばかりで「ディズニーが一番イマジネーションを失っているじゃねーか」と感じる今日この頃ですが(でもダンボは見に行く)、エミリー・ブラント目当てでIMAX鑑賞。

圧倒的な楽曲が無く、脚本ももう一歩だが、努力すべき所はかなり努力している。頭ごなしに否定したくない佳作という総評。

・凧が連れてくる希望や夜の銀行など、全体の構成は前作踏襲でありながら、前作の曲は一切廃して(フレーズは所々出てくるものの)勝負する姿勢は潔くて好感。安易な焼き直しにしない、という覚悟は伝わってくる。「女性に年齢聞くのは失礼」の一言でメリーポピンズが復活する事への疑問を一蹴する力技も悪くない。

「完璧で愛らしい」メリーポピンズをきっちりと演じてみせたエミリー・ブラント。顔もファッションも、台詞回しも佇まいも、終始見惚れておりました。

・魔法よりも大事なのは想像力。と言いつつクライマックスの「現実を直接変えてしまう魔法」にはかなりモヤモヤした。それが出来るなら最初からやってくれよと。

・マイケルはメリーポピンズの教えを受けて画家になるが、金銭的な苦しさから銀行勤めを始め、父のようになっていく。この導入は良い。お金の絵を使わないように子供に念を押す下りも、「元々想像力はあるが、今は抑え付けている」設定とリンクしている。

・陶器の世界がズバ抜けて素晴らしかった。馬車が横向きになるアクションも良かったし、2011年の「くまのプーさん」を最後に製作を止めていた手描きアニメーションを、引退したアニメーターを引っ張り出してまで復活させる熱い展開は、往年のディズニーの興奮が味わえる。この数分間を劇場公開にこぎつけただけでもロブ・マーシャルめちゃくちゃ偉い。

・電話した直後の訪問、大砲、鏡、鞄、女性活動家、階段の手すり、犬、鳩、2ペンス、煙突の代わりのガス灯、義足、ペンギン…。パッと思いついただけでもこれだけ出てくる前作オマージュ。あっさり回収する手際の良さが光る。

・楽曲の魅力は、前作と比べるのは酷だろう。メリル・ストリープのシーンは本当に必要だったのか、あまりピンと来なかった(前作の笑いまくるおじさんのシーンと似たようなものかもしれないが)。

・前作同様時間の正確さ(Punctuality)が敵になり、とある想像力の持ち主が報われる流れは上手いが、そこからある人物が現れて…という展開は、古いお話を更新、延長する昨今の映画の常套手段となりつつあり、「またこのパターンか」と感じずにはいられなかった。
一番最後にアニメでなく実際の花びらが舞う演出は意表を突かれた。

・父の改心に絞った展開が突出した印象を与えていた前作に対して、今回も父の改心だけになるとまずいと考えたのか、双子が無邪気さを取り戻す要素と、姉の恋要素も追加。姉の話がどう見ても本筋から浮いているのがもどかしく、脚本はもう一踏ん張り練り込んで欲しかった。72点。
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