emily

キセキ あの日のソビトのemilyのレビュー・感想・評価

キセキ あの日のソビト(2017年製作の映画)
3.2
 厳格な医師の父親は音楽に反対していた。兄は家を飛び出し、プロ目指して頑張り始める。一方弟のヒデは父の希望通り医師になる道ではなく、歯医者を目指す事になり、大学にも合格。学校の傍ら仲間たちと音楽をはじめ、それを聞いた兄はレーベルに持ち込み、デビューが決まるが・・・

 「GReeeeN」の代表曲「キセキ」の誕生秘話を松坂桃李と菅田将暉のW主演で綴る。兄弟の距離感が自然で心地よい。兄は弟一人残して家を出るが、そんな弟も医者ではなく歯医者になると父に認めてもらい、なんとなく上手くやっている。何かを手にするには何かを諦めなければならない。当たり前のセオリーがここでは通用しない。

 ヒデは歯医者になる夢も、音楽を続ける夢も両方を手に入れる。しかしそこには支える人たちがいたからだ。兄はあくまで裏方に徹しており、兄の葛藤が作品で垣間見れる事はほとんどない。しかし彼の言った一言は非常に重みを帯び、ラストまで引っ張っていく。

 「音楽を続けたくても続けられない人だっている」そうなのだ。才能がありながらも、「音楽は趣味だ」というヒデに対し、音楽で生きていこうと決めていた兄は、才能を開花させることはできない。それどころか弟の音楽を聴いて、完敗を感じたのであろう。弟をサポートすると決めた時の気持ち、しかしそこから新たな喜びを見出す事が出来るのもまた才能であろう。

 ストレートな歌詞、それが生まれた感動の軌跡がしっかり描かれており、歌詞に同化するように彼らの笑顔がある。未来を決めるのは自分自身。そうしてそれを信じる事で、どんな結果だって考え方一つで別の色に輝く。
emily

emily