りりー

アリー/ スター誕生のりりーのネタバレレビュー・内容・結末

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

三度目(!)のリメイクであることを承知の上でやはり話は古いよね、というのが正直な感想ではある。
もちろん、稀代のアーティストであるレディー・ガガを主演に据えた(名演でした!)というだけでも本作に価値はあるだろう。ブラッドリー・クーパーの素晴らしい監督デビュー作であることもたしか。けれどどうしても、"実力はあるのに陽が当たらない女性アーティストが権力のある男性に見出だされる"というストーリーを、いま?!やる?!と思ってしまう。ジャクソンはまだしも、レズの役回りは女性が担っても良かったのではないか。不等な扱いに拳で応えるアリーが魅力的だったぶん、違和感を抱きつつもレズに従って髪色やメイクや曲調まで変えてしまうところ、でもって成功してしまうところにがっかりした。もちろんアリーはスターになりたかったのだし、そのために自分を押し殺す覚悟もあったはずなので、後のジャクソンとの不和に繋げるためにもプロットとしては必要だっただろう。しかし、結果としてアリーは二人の男性によって成功に導かれたことになり、仮にそれがガガ自身のバイオグラフィやアメリカ音楽界の様相といった映画外のコンテキストを反映したものだったとしても、2018年の映画としてバランスが悪すぎると思うのだ。

終盤、間接的にはいえレズによってジャクソンを失ったアリーは、ジャクソンと蜜月にあった頃の出で立ちで追悼コンサートのステージに立つ。ジャクソンが遺した曲は美しいが、彼が出会った頃のアリー(彼はそれこそが彼女の本質であると信じているのだ)に固執していたことを思うと複雑だ。彼の死をもってその願いは叶ったことになる。それはアリーにとって生涯の呪いとなるだろう。しかし、彼女がひとり毅然とカメラを見据えたラストカットはまさしくスター誕生と呼ぶべき素晴らしいものだった。それだけに、あのラストカットに至るまでにもっと描くべきものがあっただろうと思ってしまう。どう観てもジャクソンのための映画だったよね、これは。

余談。先日のアカデミー賞授賞式での『Shallow』のあまりに濃密なパフォーマンスを見て、たしかに優れたラブストーリーではあったなと、少し評価を上げたのは内緒。
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