りりー

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのりりーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

とっても楽しかった。映画の街に生きる人々が、笑ったり泣いたり、踊ったり喧嘩したり、お酒を飲んだり煙草を吸ったり、夜道に車を走らせたりする、そんな他愛ない瞬間があまりに眩かった。西部劇のセット、ビバリーヒルズからの夜景、レストランのネオン、観客で埋まる映画館。覚えては忘れる台詞、役者の哲学と噂、並んで歩くヒッピーたちときらびやかなスターたち。ハリウッド、と聞いてイメージする偶像のすべて。いつまででも観ていられると思った。シャロン・テートが自身の出演作を観客とともに映画館で観るシーンのキュートさといったら!
あまりの楽しさに8/9がこのまま来なければいいのにと思っていたけれど、終わりの予感とともにその日はやはりやってくるのだ。

彼らが犯したことは絶対に許されることではない。それでも、実在の人物(存命の人だっている)をあんな風に消費していいのかな。あれこそがタランティーノ節なのだろうし、あの過剰さがシャロン・テートをはじめとした被害者への加害を裏返したものだということはわかるけれど、彼らが洗脳された少年少女だったことを思って暗い気持ちになった。
それでも、事件が落ち着いたあとに暢気に響くシャロン・テートの声には涙が出た。想像すら追いつかないひどい現実を前に何もできなかったとしても、映画なら変えられる。その矜持が美しかった。1969年を飲み込んだ不穏な空気は、いまも人々を駆り立てている。何一つ確かなものがないとしても、わたしたちは「大丈夫だよ」と声をかけあって生き延びていくしかないんだよ。
りりー

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