りりー

アマチュアズのりりーのレビュー・感想・評価

アマチュアズ(2018年製作の映画)
4.5
トーキョーノーザンライツフェスティバル2019

こういう出会いがあるから、映画祭ガチャはやめられない。今年もできる限り映画祭に足を運びたい、と思わせてくれた一本。

楽しみのために手に取ったカメラが、"撮らなくては"という焦燥へ変わっていくにつれ、牧歌的なユーモアとともに始まった映画は、ヒリヒリとした痛みを帯びていく。アイダとダナのカメラは、雇われカメラマンが決して映さない現実を切り取る。街に潜む格差や貧困、移民への偏見、さらには芸術倫理まで。言葉が通じない親子がいる。スーパーができたら仕事を失う人がいる。安い洋服が売られているのは見知らぬ誰かが苦しんでいるから。たくさんの人に知らせるために個人の尊厳を貶めることは許されるか。彼女たちの問いは尽きない。撮影に執着するあまり過激な行動をとるアイダへ、ダナは「なぜ?」と問いかけるが、返答はない。同じく移民二世である少女たちの間に横たわる格差が悲しい(アイラ・サックスの傑作『リトル・メン』を思い出した)。それでも彼女たちは再び手をとり、自分たちの映画を堂々と上映するのである。街に生きる人々の声を丹念に拾い、心を寄せたゆえに五時間にも渡る力作(編集という概念が存在しないのが愛しい)は、不恰好であってもともに生きていこうとする人々の姿を映している。

母親とのコミュニケーションに悩むムッセが、映画を通じて知りえなかった母親の姿に触れるシーンはあまりに美しい。彼の流した涙は、アイダにとっても忘れがたいものだっただろう。我々は一人のフィルムメイカーの誕生を目撃したのだ。
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