サマセット7

ワンダー 君は太陽のサマセット7のレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
4.1
監督は「ウォールフラワー」「ディア、エヴァン・ハンセン」のスティーヴン・チョボスキー。
主演は「ルーム」「ザ・プレデター」のジェイコブ・トレンブレイと、「プリティウーマン」「エレン・ブロコビッチ」のジュリア・ロバーツ。

[あらすじ]
聡明な少年オギー(トレンブレイ)は、トリーチャー・コリンズ症候群を原因として顔が変形しており、手術と入退院を繰り返してきた。
小学生5年生になり手術がひと段落したオギーは、学校に編入するが、顔を原因にいじめを受ける。
しかし、母イザベル(ジュリア・ロバーツ)、父ネート(オーウェン・ウィルソン)、姉オリヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)ら暖かい家族に助けられ、通学を続けるうち、周りの人々が徐々に彼を受け入れていき…。

[情報]
2017年公開のアメリカ映画。
原作はR.J.パラシオの小説「ワンダー」。
10年台の感動的な映画を集めたネット記事などでしばしば選ばれる作品である。

ストーリーは、顔に障害を持つ少年が、周囲の支援と自らの聡明さで、学校において受け入れられていく話である。
ジャンルはジュブナイル、になるか。
少年と両親を中心に描く序盤から、視点人物を次々と入れ替え、多様な人物の外からは伺い知れない内面を描いていく、という手法に特徴がある。

主演の子役ジェイコブ・トレンブレイは、2015年公開の映画「ルーム」の子役の演技で注目を集めた天才子役。
今作では障害を持つ子供を演じて評価を高めた。

今作は2000万ドルの予算で作られ、世界興収3億ドルを超える大ヒットとなった。
批評家、一般層双方から広く支持を受けている。
アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞ノミネート。

[見どころ]
非常にメッセージ性の強い作品。
語り口はテンポが良く、視点の移動によって、隠されていた内面が明らかになるのが面白く、113分を長くは感じない。
視点の移動を用いた語り口は、そのままテーマと直結しており、見事。
基本的に主人公が明るく、主人公の妄想の映像化も楽しいので、障害を扱った作品としては全体に明るく楽しく見られる。
そして、最後は感動!!

[感想]
じんわり感動する良い映画!!

視点の移動により、何を考えているか分からないアイツやアノコの内面が明らかになる。
そのたびに、みんな色んなことを考えたり悩んだりしてるんだ、とハッとさせられるのが、上手いし、面白い。

基本的にストーリーが想定外に逸脱することはないのだが、なんだかんだ、親目線でハラハラさせられる。
これは、ジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソンの演技に引き込まれて、こちらまで親目線でオギーや周りの子供達を心配してしまうからだろう。
2人の演技がとても自然で良い。
終盤の2人の会話シーンは、とても自然で、本当の夫婦のようだ。
子供達も、オギー役やジャック役をはじめ、いじめっ子も友人も、みんな演技が上手い。
小さい子どもたちがワイワイ遊んでいる姿は、単純に可愛い。
姉パートのティーネイジャーもの風味もテイストが変わって面白い。

障害をもった子を兄弟に持つ子供の、親に迷惑をかけないように「良い子」を演じてしまう葛藤だとか、障害を持つ子と仲良くなる側の想いだとか、ひとつひとつの視点が新鮮で、かつ、大事なことを描いていると感じさせられる。

スターウォーズ好きのオギーの妄想として、ちょいちょいスターウォーズネタが仕込まれているのも楽しい。

批判としては、障害を感動ビジネスにしている!とか、そんな上手くいくか!とかあるのかも知れない。
ただ、今作の描くメッセージの大切さからすれば、感動ビジネス上等、ご都合主義もどんと来い、で良いのではないかと思える。

ラストの展開は、そりゃあもう、感動します。

全体として、とても良い話だ。
高評価も頷ける。

[テーマ考]
今作のテーマは色々と考えられるが、まずは「障害は変えられなくとも、周りの見方は変えられる」という点がまず一つ。
あるキャラクターのセリフだが、オギー周りのエピソードは概ねこのテーマで総括できるか。
「周り」の中に、我々観衆が含まれることは言うまでもない。

その他、「「普通の人」なんて、存在しない」とか、「誰もが、自分の人生を、一生懸命生きている」という辺りも、大切なテーマだろう。
これらは、オギー以外の視点のエピソードで表現されているだろうか。

こうしたテーマが、映画の語り口とリンクすることで、すんなりと心に沁みるようにできている。

より深く、障害とは何か、ということも考えさせられる。
障害とは、個人の属性の問題ではなく、社会や集団の見方やリテラシーの問題なのではないか。
努力すべきは、「彼」「彼女」ではなく、「私」ではないのか。
「現実」などという言葉を軽々しく振り翳し、見方を変える努力を放棄してはならないのではないか。
少なくとも、大人は、次代を生きる子供たちに、「見方」を教えなくてはならない。
結構大切なテーマを含む、教育的な作品だと思う。

[まとめ]
障害や偏見に対する強いメッセージを含んだ、ジュブナイルドラマの快作。

ところで、姉ヴィアの"元"友人ミランダ役のダニエル・ローズ・ラッセルが美人だ。
と思ったら、今作公開の翌々年、テレビドラマ「レガシーズ」の主役に抜擢されていた。
ですよね!!