Otun

浮雲のOtunのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
3.9
初見。成瀬巳喜男作『浮雲』。


浮雲(うきぐも)は、空に浮かんで漂う雲。転じて、不安定でどこへ漂うか分からない身上の形容としても用いられる(和歌では「浮き」は「憂き」の掛詞によく使われる)。


なんとなくWikipedia先生の言葉なんぞ載っけてみた(「浮き」は、「憂き」の掛詞とはなんともお洒落)。

物語。
戦中戦後を背景に、出会った二人の男女の、別れたりくっついたり、また別れたり、はたまた痴話喧嘩だったりと。なんやこれw。
まるで知人のしょうもない恋愛話を聞かされてるかの様に進む、二人のズブズブなメロドラマ。

太宰治的ニヒルなアプローチで女性を取っ替え引っ替えする、男(森雅之)。
それに生涯かけて、ズブズブに追っかけてしまう女性(高峰秀子)。

観ながら、まー、なんだ。はいはい、なるほどね、もー勝手にやってくれ、とは思いつつも、何故か魅入る。
現代では浮世離れした時代感な設定も、名優二人の切実と、この二人の抗えない「性」の様なものがしっかり描写されとったから。

ラストまで見て、なんだかウディアレンで特に好きな『ギター弾きの恋』を連想した。

素直になりきれなかった人の「性」、と言うのは、後になると切ない。
いつだって。
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