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浮雲のikumuraのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
3.6
この映画を観てから高峰秀子[私の渡世日記』を読み始めたのだが、
これは確かに傑作。
賢くて、おきゃんで、昭和の時代に男社会や戦中戦後の混乱に負けず生き抜いて輝いた女性、という感じがするし。
そして冷静な観察と、自分の感じたことを、こうして言葉にできる人を本当に尊敬する。

あとづけではあるけど、浮雲の高峰秀子の凄まじさも、その「自分で言葉にできる」こと、自分を客観視できることに通じる気がする。
日本占領下の仏印で農林省技師のツンデレ富岡(森雅之)と不倫と知りながら恋に落ち、
戦後何度裏切られても縁の切れないゆき子。
仏印での可憐なワンピースを着たタイピストから、
落ちぶれ、もう若くない、という立場に立たされ
(ここで対抗馬になるのが岡田茉莉子www豪華www)
ても、ふとみせる美しさが凄みを感じさせる。
ここぞ!というところで魅せてきて、観客の肝を震え上がらせるのだ。

しかしあんなにクズなのに女の切れない富岡すごいな・・・
太宰治好きなのでやはりどうしても思い出す(原作者の林芙美子も無頼派)けど、
今とは倫理観や状況が全く違うんだなあ、
自分だったらどう生きていたのだろうか?とふと思う。
(富岡ではないな(笑))
未見だけど二十四の瞳と高峰秀子との振れ幅に観客はどう思ったのだろう。
そもそも、アート映画じゃなく娯楽作品としてこれが受け入れられてた、というのも興味深い。

成瀬巳喜男と小津安二郎、僕は小津を偏愛してきたのだけど、
人間の本質をシンプルに見せる、って意味では似てて、でも成瀬がその業のようなものにフォーカスしていて、
やっぱどちらも好き。
「流れる」も昔見て良いなあと思ったので、再見してレビューしたい。
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