emily

奇跡のピアノのemilyのレビュー・感想・評価

奇跡のピアノ(2015年製作の映画)
3.2
 目の不自由な少女イェウンは母親の鼻歌をピアノで演奏し始めた幼少期から、音楽の才能を見出され、たちまち天才少女ともてはやされるようになる。しかし夢をかなえるためコンクールに出場するも、入賞できず・・

 眼球のない少女がもって生まれた才能。しかし才能は勝手に目が出る物ではない。彼女を支える周りの人たちの力があり、人との出会いがあり、自分自身と向き合う事で、ピアニストとしての表現力を手に入れていく。イェウンを追ったドキュメンタリーであるが、それ以上に母と子の物語であり、現実に立ち向かう成長物語である。母と子の絶妙な距離感、近すぎても遠すぎてもいけない。常に娘を信じ、見守る大きな心を持った母の優しさと厳しさに心打たれる。

 イェウンは自分の世界を自分の曲の中で表現する。そこに自然の描写が交差し、目を閉じると澄んだ心と、イェウンが描く世界が物語のように流れ込んでくるのが素晴らしい。

 やはり才能には努力が伴う。少女の葛藤と、両親の葛藤。笑顔の奥の涙と優しさと強さがしっかりとピアノの調べに色をのせ、表情に輝きをもたらす。信じる事、見守る事。簡単なようで一番難しい。いつだって味方でいてくれる。信じてくれる人がいるという事は、自分自身の最大の強みになる。それは親子の関係だけでなく、人間関係で一番大事な事だとひしひしと感じさせる。
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