シネマJACKすぎうら

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのシネマJACKすぎうらのレビュー・感想・評価

4.3
前半はどこか不穏な心理サスペンスの空気を醸しながら静かに流れていくのだが、、
あの独特のダークな音楽が、この映画の"ただならぬ感"を漂わせる。

この作品、殺人鬼もサイコパスも、悪魔はおろか幽霊さえも出てこないが、紛れもなくホラー映画。近年、中盤以降ここまで観にきたことを後悔した映画はなかったんじゃないだろうか。

特に恐ろしいのは、バリー・コーガン演じる高校生マーティン君の"はにわ感"。全く人格を感じられないのだ。 よって、彼が果たそうとする所業が、神の如く冷酷に映る。

あとで冷静になって考えてみたら、あのクライマックスはヨルゴス・ランティモス監督の前作「ロブスター」にも似たどこか滑稽な造形をなしている。しかし、、この物語世界のあまりの恐ろしさに笑う余裕などなかった。

もしかしたら過酷な歴史の記憶がそのDNAに刻まれているせいか、このような映画を笑い飛ばせるのが、実はヨーロッパ人の本当の強さなのかも知れない。


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https://youtu.be/Pkq9M92sIR8