YasujiOshiba

強盗狩りのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

強盗狩り(2016年製作の映画)
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たまにはこういう変な映画もいいな。オリジナルタイトルの「The last heist 」は「最後の銀行破り」だけど、いやはや文字通りの「最後の銀行破り」。

それにしても、神に仕えるシリアルキラーとはアイデアだ。「Windows Killer」と呼ばれるのだけど、これは、あるとき神から人々の魂を救えと命じられ、たましいの窓(Windows)である両目のコレクターとなる。まあ、本人は人間の魂を救っているつもりでいるのだけど、やっていることはシリアルキラー。

このシリアルキラーの神父を演じるのがヘンリー・ロリンズ。この人、俳優だけじゃなくて、音楽家でもありコメディアンでもある、マルチタレントなのだけど、抜群の存在感。そんな彼が、「ほんとうに罪深いのは、もしかすると私ではなく、私以外のすべてではないかな?」なんてセリフを口にすると、おもわずハッとさせられるよね。

さて、そんな「ウインドウズ・キラー」には、元軍人が組織する強盗団に、ロサンジェルス市警、それから麻薬カルテルがらみの悪い奴らなどが絡んでゆくのだけど、プロットはじつに単純。単一の時間、単一の場所、単一のテーマに沿って、じつに古典的な演劇の「三一致」の構成で、トントン拍子に話すすんでゆく。血だらけだけど...

ところで、元軍人の兄弟の身の上には、イラクの派兵とそこで起こった何らかの事件が影を落としているのはわかるのだけど、具体的には示されない。けれども、出兵先から兄が帰ってこなかったという女性警部補パスカルとの短い会話のシーンなんて、それだけで悲しい時代背景が見えてくる。そう、誰もが最悪の時代を生きているというわけなんだ。

だからね、たとえ血糊が飛び散るスプラッターでも、いやだからこそ、ちょっとしたセリフのリアリティーがものを言う。たとえば「ウィンドウズ・キラー」の神父が口にする「神の光」なんて、いやはや、まったくもって実に原初的で野蛮で単純素朴なのだけど、恐ろしいまでの力強さを持っているじゃない?

そこはやはり、ぞっとさせるところなんじゃなかっただろうか。

だからね、良い子は見ちゃダメよ!
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