emily

太陽を掴めのemilyのレビュー・感想・評価

太陽を掴め(2016年製作の映画)
3.2
 元子役、現在はバンドでボーカルやってるヤット、ライブハウスでミュージシャン達の写真を撮るフォトグラファーのタクマ、タクマの元恋人のユミカ。高校時代からの友人関係の3人はそれぞれに葛藤があり、なんとか前向いて踏み出そうと頑張っているが・・

 青春時代の心のモヤモヤを真っ向から捉え、ヒリヒリ感が時に恥ずかしいほど青春で、古臭く、暑苦しく、だが愛おしい。自分の不甲斐なさを周りのせいにし、そんな自分にイラつき、天然で男を惑わしてしまう女も居る。みんなと一緒に居ながら、自分は別の世界にいるタクマ、ハッパ漬けの友人達、すべての題材がヤットの内側にある魂の叫びと、そのピュアなまでの思いを煌びやかに浮き彫りにしていく。

 ヤット演じる吉村界人の演技には生が備わっている。言葉の表情の一つ一つが生きていて、パワーが有り余っている。だからこそ”痛い”セリフもちゃんと観客に届くのだ。演者の力量があってこそ今作は生きていると思わずにいられない。

 苛立って、発狂して、自分を責める事で、なんとか生きていく。でもそれを選んだのは自分自身で、すべての題材は自分の中にあるのだ。周りと比べても、本当の敵は自分自身の中にある。しかし現状打破のためもがく、ダメな自分を責める事は”変わる”チャンスであり、それがなくなったときは諦めた時だ。それが大人になるということなのかもしれない。だったらいつまでももがいていたい。自問自答していたい。熱い物を思い出させてくれる。恥ずかしいまでにストレートで、恥ずかしいまでに古臭い。でもそれはいつの時代も変わりなく、心の響くのだ。
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