広島カップ

妖怪百物語の広島カップのレビュー・感想・評価

妖怪百物語(1968年製作の映画)
2.5
これは私が小学三年生の春休みに観た作品。
こういう作品を本当に怖いと思える人生の良い時期に観れて、うぅ〜ん、実にグッドタイミン!でした。

本作が公開された1968年は1月にTVアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」が放映開始になっており、当然その番組を視聴済みだった私は既に水木しげるの妖怪にガッチリと心を掴まれて映画館に出掛けた少年でした。
因みに併映は『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』でどちらかといえばそちらが観たくて映画館に足を運んだのでしたが...

妖怪の造形やヒュードロした湿っぽい音楽は正に小学生向けで心から怖かった。
今観ると妖怪はこんなに側転やバク転なんかしないよなと冷めた目で観てしまうのですが、でも代わりにその子供の頃の当時にはなんとも思わなかった貴重な見所に今回気がつきました。

日本のピート・ポスルスウェイトかもしれない吉田義夫が街の悪辣実力者の下っ端として善良な町民を虐める役なのですが、これが正にハマり役。強面の彼がノッペラボウに囲まれて腰を抜かすシーンが今観ると秀逸です。
それともう一つ、妖怪百物語という妖怪話しを悪代官の前で噺家が酒席の余興で演る場面があるのですが、この噺家がなんと八代目林家正蔵。のちの林家彦六で林家木久扇の師匠。蝋燭の火の加減による表情の演出もあるのですが、あの独特の声でオドロオドロしく語る芸は本作の大きな見所のひとつ。

終映後、私が映画館を出ると外は小雨が降る暗くドンヨリとした夕方。映画館の近くには本作に出て来るオイテケ堀のように岸辺に鬱蒼と草木が繁って澱んだ水が流れる川がありました。
春雨橋という名前の橋がその小さい流れの上に架かっており、その橋のたもとにあるバス停で傘を差しながら駅に向かうバスを待っていた時に感じたなんとな〜く嫌な夕暮れ時の空気は、今観て来たばかりの本作の怖さと一緒になって、オヤジとなった私の心の中に今でも染み付いて離れないでいます。
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