荒野の狼

ちょっと今から仕事やめてくるの荒野の狼のレビュー・感想・評価

3.0
2017年公開の映画。語りと実質上の主演は工藤阿須加であり、「主演」となっている福士蒼汰の出演場面は工藤の半分ほどだが、本作の素晴らしさは福士の輝き。辛い人生の中で、福士のような人物が周りにいたらと思ってしまう演技で、暗い話が続く映画にも関わらず福士が登場すると明るい希望が見えてくるほど。これに対してパワハラ上司役の吉田鋼太郎はちょっと抑えた方がいいくらいの憎まれ役で工藤が精神的に追い込まれていく過程にリアリティを与えている。この中で職場の先輩役の黒木華が工藤をサポートしていくのだが、存在感は抜群で複雑な内面が演技に現れる巧さで、人物の魅力は群を抜いている。
本作の魅力の一つは福士が演じる人物の正体で、予告編を見てしまうと興味の一部が削がれてしまうので、こちらは見ないで鑑賞するのがおススメ。映画は原作と異なるようで、映画のオリジナル性が強い後半は失敗。小池栄子の登場するあたりから、映画はまったく別のものになってしまいリアリティがなく、この終盤部分は不要で惜しい。映画に登場するバヌアツ共和国はオセアニアの国で英語に似た独自の言語が本作でも登場し、ユニークではあるが、バヌアツの紹介が唐突でストーリー上、この国が登場する必要性が描かれていない(生きがいとして、日本より遥かに恵まれない国でボランティアをすることの意味は、福士の明るさと現地の子供たちとの関りで何となくは伝わる部分はあるが)。
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