無茶苦茶可愛く微笑ましく、またしてもキアロスタミにやられたと感服敬服。
おじいさんが補聴器をはずすと音が全く聞こえない。聴覚過敏の人はイヤーマフや耳栓で雑音を遮断するけど選択的に補聴器をはずす行為はその逆で、寧ろ便利にもみえるし困るのは自分より周りの人たちではなかろうか、ということが十数分の中に非常に手際よく盛り込まれる。
絵はおじいさんの主観であったり客観であったりを行き来するが、前半の音は完全におじいさんの主観（主聴？）であり、家に入って補聴器はずしてからは、家の中の音がおじいさんの主観の音で、家の外が客観の音となる。家の中はおじいさんの身体と一体になっているとも言える。家の外の女の子たちの構図のなんと可愛らしいこと！日常に繰り広げられるサスペンスとして成立してることにまたしても驚きながら、子どもたちのあの増え方におじいさんと一緒にニコニコしてしまう。
家の中と外の連続カットバックはエドウィン・ポーターの『アメリカ消防夫の生活』をちらっと思い出した。
