ぴのした

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのぴのしたのレビュー・感想・評価

3.4
詩を原作にした映画らしい。テーマとしては東京で生きる人々の生きづらさなのか、詩的なモノローグや台詞回しが多く、背景にこれでもかと人混みや広告が映り込む。

いやあまあ、詩からそのまま引用したであろうモノローグとか、路上シンガーの下手くそだけど刺さる歌の歌詞とか、言葉の選び方はすごく好きだった。

ただ、どうしてもあの主人公の女が好きになれない。自分の不幸に酔って、震災とかテロとか大きな問題に自分の不幸をすり替えててるだけじゃん…。

あと映像面でもその主人公の思想を表してるのか、「東京の人々はスマホばっかり見ては、アホみたいに酒飲んで騒いで、セックスか会社の愚痴を言うことしか頭にない」みたいなわざとらしい演出もいやらしい。

そうやって主人公が見下してる有象無象にもその人なりの不幸ややるせなさがあるはずで、「俯瞰してる自分だけは特別」みたいなサブカル選民思想的な演出が抜群にダサい。それをオシャレだと勘違いしてるところがこの映画の決定的なダサさ。

ただ、慎二たち工事現場で働く男たちは結構好きだった。特にあのコンビニ店員に恋する男性のセリフ「幸か不幸か、こんな生活だけどおれたちは生きてる、恋もしてる。ざまあみやがれ、ざまあみやがれって言ってやるんだよ」とか。

慎二も、会いたい人には「会いたい」とだけメッセージを送り、会いたい人に走って会いに行く。理屈を超えたその愚直さがとても心にグッときた。

ただやっぱり東京で生きる人々の生きづらさを描くには物事を単純化しすぎているように感じてしまった。

詩としてはきっと面白いんだろうけど、映画としては正直言って薄い。『恋人たち』やドラマ版の『火花』、『南瓜とマヨネーズ』にあるような、あの東京で生きる人々のこれでもかといった生々しさ、生きることの痛々しさがまったく感じられなかった。そういう意味では惜しい作品。