グラッデン

レッド・スパローのグラッデンのレビュー・感想・評価

レッド・スパロー(2017年製作の映画)
3.8
心を操れ。

劇場にいた男子高校生風のグループが終演後に無言で退出するほど、容赦のない性描写・暴力描写の連続。正直、本作が現代設定、実在の国名を用いて問題無かったのかと不安になるほどのインパクトがありました。

本作は、主人公・ドミニカが叔父に資質を認められて「スパロー」に変貌を遂げる前半と、実際に参加したミッションの行方を描いた後半の2つに分けられると思います。

前半は、養成所において人間から倫理的な側面をそぎ落とし冷酷な国家の兵器に変わる過程を残酷なまでに粛々と進められていったのが怖かったです。作品全般を通じて、主演を務めたジェニファー・ローレンスの体当たりの演技が心配になるレベルではありましたが、清廉さ・純粋さを表現するバレリーナから武器となる妖艶さを実装した姿への変貌には驚かされます。

後半は、彼女のミッションの行く末が不透明。彼女の行動のどこまでが本心によるもので、どこまでが相手を信じ込ませるための策略なのか、前半の養成所で仕込まれえた「心理操作」の紹介を踏まえ、鑑賞たる我々も疑念を抱きながら鑑賞を進めていました。ある種、逆転に次ぐ逆転の展開で、裏をかかれる場面もありました。なお、拷問シーンのエグさが際立ちますので、苦手な人には本当におススメできない作品だと思います。

また、要所で流されるクラシック音楽の使い方、作中の服装や容姿における色彩の変化など、見せ方の部分も上手さを感じました。特に、作品冒頭におけるドミニカが踊るバレエ公演の流れは、作品世界に鑑賞者を引き込む力も強く、それと同時に登場人物たちに何が起こったのかを端的に伝えることで、物語の入口の役割としても機能していたと思います。

本当「今の時代によく作った」という率直な気持ちでいっぱいになります。