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否定と肯定のRのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.8
もっと地味で単調でずーんと重苦しいドキュメンタリー風の映画やと思ってたので、演技大き目やし、音楽も娯楽作っぽい大味な感じやし、期待と違いすぎて、前半なかなか馴染めなかった💦 特に、主人公デボラを演じるレイチェルワイズ、すばらしい女優なのでしょうけど、もともとこの人の演技そんなに好みじゃない上、ずっとハイやし、やんややんや喋るし、アメリカ訛りがわざとらしく聞こえるし。もとの喋り方とイメージと違いすぎてそう聞こえただけかもしれんけど……イギリス人である彼女がアメリカ人に対して持ってるイメージが、彼女にこういういかにもなアメリカ的演技をさせてるのでは??? みたいな要らんことを考えてしまって、いろいろ不満を感じてました。けど、中盤くらいから、それはつまりレイチェルワイズがあまり喋らなくなってからなんやけど笑、だいぶ見やすくなって、話もヒートアップしてきて、違和感も消えた。否定と肯定。原題はDenial(否定)。主人公のデボラは、アメリカの大学でホロコーストの研究と教授をしていて、自身の著作のなかで、アーヴィングという学者を厳しく批判していた。というのも、アーヴィングは、ホロコーストなんてものは実際はなかったのだと、とんでもないことを吹聴しているためだ。それに対して、アーヴィングは、デボラの著述は名誉毀損にあたると主張、デボラと出版社に対して訴訟を起こす。しかも、アメリカから遠く離れたらイギリスで。なぜイギリスかというと、イギリスの法律では、起訴内容に対して、原告側ではなく、被告側が立証責任を負うことになっているから。なので、デボラ側が、アーヴィングのホロコースト否定論は偽りのものである、ということを立証しなければならない。そんなのありーーーー??? 彼女の代理をする弁護士たちは、戦略として、デボラに証言台に立って証言することをさせまいとする。が、デボラとしては黙っちゃいられないし、メディアに「デボラは臆病になっている」と報じられるのも嫌だ。また、弁護団はホロコーストを生き抜いた被害者たちにも証言をさせないと決定。こちらの方針にも賛同できないデボラだが、弁護士団の真剣さと誠実さに心を動かされ、彼らに従うことに。そしていよいよ世界から大いなる注目を集める審理が開始となる…という話で、まずお話そのものよりも、イギリスの裁判のシステムなどが見ててとてもおもしろい。審理は王立裁判所で行われるのだが、そのいかめしい外観や内装には目を奪われるし、陪審員制を利用するか否かの選択もあったり、本番のときは弁護人と裁判官は中世風スタイルのかつらをつけるのとか、へええええ、と単純にそういうのを知れること自体が興味深い。あと、開廷時に起立して礼をするのも、アタシはアメリカ人だからお辞儀はできないわ、とデボラが言うてて、アメリカ人は英国人ほど遜るのが苦手なんだなーとか、そういうことが気になって、気になって、気になってる間に、いつのまにやら、展開そのものに引き込まれてた! うまい! 後半、もはやデボラが脇役、弁護団が主役になってからの、彼らのクールかつ真摯なチームワークは見ててワクワク嬉しくなってくる。特に、スーツのメガネ男子ふたりがめちゃめちゃイけてた! キリッとシャープで一見ビジネスライクなんだけど、ハートは熱くてとてもヒューマン! かっこいい! シビれる! そりゃデボラも黙ってまうわ! 対するティモシースポール演じるアーヴィングは、敵役としてあんまパッとしてなくて、手強い感じがしなかったので、少々盛り上がりに欠けてたかな。全体的に絶妙なアンバランス感があるのが少々気になったけど、それでもなかなか面白い映画でありました。テーマもよかったし。一回は見といてよかったと思うけど、もう一回見たいとまでは思わないかなー。
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