次男

君の名前で僕を呼んでの次男のレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.0
なんで裸の銅像が多いのか、わかった気がする。

衣類を着た状態が完成形な自分に対して、彼らはその身ひとつ、裸の状態が完成形のようだった。彼らはするりと衣類を捨てて、軽やかに躍動して、とてもネイキッドだった。骨と臓器と筋肉と脂肪を皮の下にしまって、それで完成してた。

1980年代という時代と、夏という季節と、北イタリアというロケーションも素敵だった。余計な道具もなく、ネイキッドな彼らがそのままで振る舞える時制と場所。そんな自然な空気の漂う世界に流れる音楽は、ピアノひとつでちょうど良かった。

◆◆

それだけ本来的な空間で、素直な感情と発露はすごく馴染むはずなのに、男性同士というそれだけで本人達に苦悩と違和感が生まれてること自体が、なんだかおかしい、と素直に思えてしまった。

いまその差別意識をなくしていこうと世界的に変革していることとか、当時の寛容性がどうだとかをさておいて、すごくフラットに、「そこに苦悩なんていだくべきじゃないよ」って思えた。

そう思ってるところからの、お父さんの言葉は、ぐっときた。

◆◆

これは好みだけど。
長いと思ってしまった。

ただ単に「長い!退屈!」じゃなくて、「もう語らないで、この映画の時間を長いと思いたくないのに」って思った。

彼らの時間は短かったはずで、受け取り手の僕もそう思いたいところだったのに、萌芽から結実、その後までしっかりと体感してしまったせいで、そういう刹那性みたいな感慨にはなれなかった。甘く輝いた時間は長くなくて、無情にも過ぎてってしまう。そんな残酷さを、もっと体感したかったなあ。

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なんであれ、『君の名前で僕を呼んで』というタイトル・言葉が、もう狂おしいほど素敵すぎる。
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