フランコ

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のフランコのレビュー・感想・評価

5.0
あかりを灯すタイトルクレジットから始まり、序盤では目の不調を訴え電気を点けたり消したりする主人公が懐中電灯を見つけ、混沌とした青春(時には接吻する男女を、時には斬り付けられた屍を)を照らし、ミン(明)を見つけ日々が照らされたかと思いきや懐中電灯を置きまた闇へと迷い込む。。

これだけ長大で、登場人物が多くて幾重に交錯にするにも関わらず、全くだれずに集中力を維持させるエドワード・ヤンの緻密さにひれ伏すしかない。さすが元コンピューター設計士兼ハーバード建築学科合格者。ただ初見では誰が誰だか認識するまで時間が掛かった。あと本人が3時間版で決定版としてたのにわざわざ死ぬほど長くしなくても良いのにとは思った。権利的にこっちしか残ってないなど色々噂はあるみたいだけど。。

とはいえ当然無駄なショットなぞなくむしろ全てのショットが決定的と言えるし、明暗の切り替えはもはや神秘的。暗闇がかなりの割合を占めてて、懐中電灯というアイテムもなんともストレートで良い。ファム・ファタールのミンがもう少し美人だったら。。と思ってしまうが妙にリアリティがある。『恐怖分子』でもそうだったけど、社会が生む暴力、みたいなのに普遍性がある。重苦しいムードとは裏腹に、監督の登場人物一人ひとりに対する愛は分け隔てなく深く、彼らを写すカメラの眼差しは暖かい。

やはり劇場で観ると暗闇の表現力が家で観るのとはケタ違いで、鳥肌度がより高い。暗闇の美しさを教えてくれる映画。

2016/11/20 blu-ray
2017/1/4 blu-ray
2017/3/18 角川シネマ有楽町
2018/5/13 ケイズシネマ
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