ぴのした

ムーンライトのぴのしたのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.7
今年度アカデミー作品賞受賞作。派手ではないけれど人物描写が上手くて、社会派な側面もあって、演出も程よく洒落ててザ・アカデミー映画という感じ。

ひ弱な黒人シャロンの半生を、「リトル(少年期)」「シャロン(青年期)」「ブラック(成年期)」の三部に分けて描いた物語。ヤク中の母親に虐げられながら、薬の売人ファンを親のように慕った少年期、唯一の友達ケヴィンと心を通わせた青年期、そして成年期には長年ぶりにケヴィンと再会を果たす…。

この3部構成がシャロンの心の移り変わりをすごくよく表しているように思えた。リトル、シャロン、ブラックはすべてシャロンのあだ名や呼び名。いじめられっ子に馬鹿にされて呼ばれたリトルから、本来の名前であるシャロンを経て、愛するケヴィンから付けられたあだ名であるブラックという名前を自ら名乗るようになるのは、シャロンが自らの意思で人生を選び取っていく過程を象徴しているように思えた。

シャロンとファンとの関係性が好き。ニューシネマパラダイスのトトとアルフレードのように、シャロンはファンから自ら人生を選び取っていくことを学ぶ。月明かりの下で黒人はブルーに輝く、というのもブラックという名前に合ってて良い。

月明や蛍光灯の使い方も印象的。月明かりというのは「日陰者に当たる特別な光」といったような力強さと美しさを感じた。