パリの建築家カロリーナとdjの男が異国の地で出会い、運命のいたずらにより二夜を一緒に過ごす事になる。
言葉が通じない、英語を喋られないという設定はフランス語には字幕なしで見せる事で、同じように言葉の壁を観客も感じることになる。しかしそれは彼女の心の闇を隠す防御法だった。
爪を噛む、人との距離感を保つ。深入りしない。年齢を重ねた女性が傷つく事を恐れて、自らを守るため不必要なものは近づけない。しかし異国の地というのは心を解放させる。慣れた土地より寂しさを感じる。彼女の滞在はそのまま自分の心の闇と向き合う時間へシフトしていく。
出会うことのなかった2人が運命のいたずらにより二夜を過ごすことになる。これは一夜ではあぶれなかっただろう。二つの夜が2人の孤独をむき出しにし、浮き彫りになった彼女の孤独の影から男のそれが交差していくのだ。
触れなければ知らなかった。交わらなければ感じなかった。人の温もりは誰とでも感じれるものではない。彼女はそうして彼は見ようとしてなかった自分の孤独と向き合うことにより、自分を認め許し、前を向いていくのだ。
ひと夜の孤独は誰かと体を重ねれば補えるかもしれない。しかし、本当の孤独は埋まらないだろう。誰かと真摯に向き合うことは、同時に孤独を知ることである。そんな単純なことに気がついた時、彼女は立ち上がる。
二つの夜が導き、二つの夜が切なくも強い未来へと導く。孤独と向き合うこと、1人になること。運命の人と出会うのはその後である。