とある遺体を解剖し、オースティンは呟く。
「孤独だから死んだ」
ベテラン検死官である父トミーは
「頭を打ったからだよ」と答える。
どうして死んだのか、どうやって死んだのかは似ているようで全く違う。
プロとして最善を尽くす親子。
だが遺体は“どうして死んだのか”を聞いて欲しかったに違いない。
これはまさしく生ける屍の逆襲だ。
噛み合わない対話不可能なふたつの世界。
不条理な仕打ちは互いを苦しめる。
その連鎖が終わることはないと知っているから恐怖する。
遺体にメスを入れても気味が悪いだけなのに、生者の肉体に同じことが起こると「痛い!痛い!」とその痛みに共感する。
ミラーニューロンとかいう神経細胞の働きらしいけど、厄介なもんだ。
遺体が遺体でなくなった時、その架け橋には“痛み”しかないから。