回想シーンでご飯3杯いける

残像の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

残像(2016年製作の映画)
3.5
アヴァンギャルドな作風で有名なポーランドの画家、ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの晩年を描いた実話物。

僕のようにストゥシェミンスキの事を知らない人にも伝わるものがあるメッセージ性の強い作品だ。20世紀中盤のポーランドはソ連の勢力圏にありスターリンに政権による全体主義が貫かれていた時期。ストゥシェミンスキのような自由な作風をそれに反するものと見なされ、大学から解雇、最終的に芸術家デザイナー協会からも終われ、画材や食料さえ入手できなくなってしまう。

監督は、同じくポーランドで画家を目指していた事もあるアンジェイ・ワイダで、本作自体が絵画のようでもある。ストゥシェミンスキのアトリエがスターリンの旗の影になり真っ赤に染まるシーンはあまりに象徴的。説明的な台詞はほとんどなく、彼の自由が音を立てるように奪われていくさまを容赦なく描き出していく。

政治権力が国民の自由を奪う事の怖さ。日本では表面的に浮上する事がないものの、逆に言えば、常に一定の監視と抑圧に支配されている状態とも言え、決して他人事ではない話なのである。