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At the terrace テラスにてのemilyのレビュー・感想・評価

At the terrace テラスにて(2016年製作の映画)
3.6
 緑に囲まれた豪邸でホームパーティが行われている。しばしの風を求めてテラスに出てくる人たち。デザイナーの斉藤とその妻はるこ、同じ斉藤で大病をして回復したばかりの男、豪邸の主の専務、その妻、すぐ泣く会社員、さらにその息子も加わり、はるこの”腕”の話から少しずつ会話がずれ始める・・

 豪邸のテラスという空間の中で繰り広げられる会話劇。まるで舞台を見ているように、テラスに人が来て会話をし、さらにはけていく。女二人と男五人。男達の会話の中心ははるこの白い腕である。そこに行き交うのは、女と男、男と男、女と女の醜い嫉妬、どろどろした情欲、目線が加わり、見るみられるの方程式をぐるぐると壊しながら、単純な会話が気が付いたら深いところまでたどり着き、それぞれの人間性が徐々に浮き彫りになっていく。

 上流階級の人たちの会話はお互いを探り合い、うわべの会話を繰り広げながら、突如狂気と化する。お酒が入ってる分、しっかり言い訳も準備されており、それでいて会話の流れ、間が絶妙。白い腕から始まった会話がこんな遠いところまでたどり着いたという、気が付いたら映画はフィナーレを迎えている。会話劇だけだが、そこにはしっかり立体感がある。表情があり、時に引いたカメラで、まるで覗き見している気分を味あわせてくれる。そこにあるのは日本人独特のうわべの会話である。しかしほんの少しのずれが上手くはまりあうと、ここまで人は滑稽に自らをさらけ出すのだ。演者たちの表情、言い争いの末の本心、見てる分にはそれはコミカルで、徐々に徐々に緩やかな笑いが広がっていく。

 しかしここにある会話劇はどこにでもある会話劇であり、日本人の特性が良く生かされている。ラストの大惨事ともいえるハッピーエンド。見るみられるの関係にしっかり観客を巻き込み、それは観客の実生活へも繋がっていく。なんだかモヤモヤしながらすっきりする。なんだかまた見たくなる。富裕層だって欲にまみれてこんなにも滑稽だという姿を見る事で、安心するのかもしれない。私もまだ大丈夫と思えるのかもしれない・・
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