アガサ=クリスティー原作が、いかに優れているかあらためてわかった。
特定の犯人探しという、あまたのミステリーとは異なるパターンを生み出し、また、読者である当時の庶民が行けないような憧れの観光地を訪れるという「2時間サスペンス」旅ものの元祖になるゴージャス感を盛り込んでいる。
だから、何度映画化されても面白い。
ケネス=ブラナーはポアロを「正義の守護者」と位置づけ、オープニングの活躍から、そのキャラクターと優秀さを印象づける。
錚々たる乗客との騙し合い、つまり演技合戦も面白く、ほとんどの舞台が列車なのに飽きることがない。
1974年版(イングリット=バーグマンにショーン=コネリー、ジャクリーン=ビゼット他ぜいたくな)のラストとは違っていたが、これはケネス=ブラナー監督の解釈として正しいのだ。
関係者みなを集めて謎解きをするのも、「金田一耕助シリーズ」より早いし、アガサ自身の逸話も『アガサ』として映画化もされている。
語って楽しい、のちのちの鑑賞感が豊かにある映画だった。