奈菜子

オリエント急行殺人事件の奈菜子のレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.6
まるで舞台を観ているよう
謎解きのシーンの構図が私にとってこの映画の全てでした
長い一つのテーブルに座した12人の乗客達を正面から捉え、
「ここにいるのは皆、善き人たちです」と。
豪華な出演者、彼らのうち独りでも欠けたなら、この事件そして映画も成立しなかっただろうと思います
彼らの目の前に最後の晩餐は並ばずとも、そこには犯人の背負ってきた十字架が見えるようで、この世界で最も有名な殺人事件の哀しさが伝わってきました
そしてオリエント急行を背に彼らと向かい合う名探偵ポアロ 
ケネス・ブラナーの堂々たるポアロぶりも素晴らしかったです

エンターテイメントとしての「オリエント急行殺人事件」は
数年前に放送された三谷幸喜によるスペシャルドラマ「オリエント急行殺人事件」の方がずっと完成されていたと思いますし、
原作では善と悪の間で揺れることなく、鮮やかに謎を解いて退場するポアロの印象が強かったと記憶しています

つまりはこんなに哀しい気持ちになる予定ではなかったので、あまり高い点数はつけられませんでしたが
近年ミステリ映像作品のエンターテイメント色が強くなりすぎているなかで
本格ミステリ映画としては最高の出来だと思います
クリスティ作品で失敗は許されないという覚悟を感じました
奈菜子

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