emily

ハローグッバイのemilyのレビュー・感想・評価

ハローグッバイ(2016年製作の映画)
4.3
 同じクラスにいながら交わる事のなかった女子高生はづきとあおい。それぞれ孤独を感じており、あるとき認知症のおばあさんを助けることで、二人は出会い、おばあさんのラブレターを初恋の人に届ける手伝いをすることになる。三人は一つの曲により心を通わせ、大切な物に気が付いていく・・・

 暗い色彩、全編を埋めるおばあさんが大事してる曲が優しいピアノの調べで綴り、心地よく吹く風がカーテンを揺らし、暗い中に光を灯し、会話の間をゆっくりと埋めていく。交わる事のなかったクラスメイトの二人が出会い、真逆の二人だからこそ感じる苛立ちをぶつけ合うことで、自然と二人が心を埋めあい、背中を押しあっていく姿が繊細に描かれている。また認知症のおばあさんが二人の間に居る事で、時空や年齢による壁を見事に取っ払い、二人の間にある壁をいとも簡単に取っ払っていくのが心地よい。

二人の抱える孤独を閉鎖的な画面と、姿をカメラが追う形で動作で見せ、引きのカメラで長い階段や、後姿から漂う悲しみを風と音で表現する。言葉以上に心の動きを、音と風景にしっかり溶け込んで見せてく描写が見事。息子による伴奏がしっかりのったおばあさんの大切な曲が流れる時、心の糸が溶けるように涙がこぼれた。

 うわべの笑顔、うわべの言葉、うわべの友達ごっこ。本当の友達とは言葉で繋がる物でも、見せかけの笑顔で繋がる物でもない。辛い時悲しい時そこに居てくれる人。そうして心から自分の事を心配してくれる人。うれしい時は心から喜んでくれる人。それぞれの過去を清算し、前に向かっていく姿が清々しい。そして生まれる新しい友情は言葉ではなく、そこに吹く風と鼻歌で綴る。繊細で美しく、言葉以上に音と風景がしっかりと二人の変化を綴りあげていく。だからこそ心に響き、心に残る。前を向いて進むには不必要な物を脱ぎ捨てる必要がある。そうしてはじめて大切な物を手に入れるのだ。
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