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立ち去った女のBATIのレビュー・感想・評価

立ち去った女(2016年製作の映画)
4.4
U-NEXTにて。ラヴ・ディアス作品初鑑賞です。228分の長尺も気にならないほどの美しく収められたモノクロの世界。長回しが多いと聞いていたので観る前は若干不安だったものの、どれもそうカメラは動かずに日常にある時間の流れそこに立ち尽くす人間の様を表すためのものであった。どのショットもそのままポートレートにできそうなほどのもの。その辺りはパヴェウ・パヴリコフスキとセンスが近いと感じた。長尺ゆえに行動範囲は狭いもののロードムービーを見ているような感覚に陥る。

冤罪と喪失を抱えさせられた女ホラシアの静かな地獄。その同じ地獄で生きる女たちとの出会いと相互補助。そう、これは「女たち」の物語で、トランス女性であるホランドとの交流も同じ「女」であると当たり前に等しく描くことに矜持を感じた。この世界では女は搾取され、いつでも暴力の対象となりうると。

復讐劇と聞いていたのでソダーバーグの「イギリスから来た男」っぽくなっていくのかというとそうではなくて、女同士の仁義というところになっていくのね。だからやっぱりテーマは「搾取され利用される側の女たち」というところなんだと思える。教会というもの劇内の在り方もそう。フィリピンの政治(カトリック)という背景というのは大きいのではないかな。
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