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リチャードの秘密のemilyのレビュー・感想・評価

リチャードの秘密(2012年製作の映画)
3.4
アイルランドで実際に起きた事件を元に、南ダブリンの裕福な家庭に育った18歳のリチャードがバカンス中にララと知り合い恋に落ちる。しかし彼女の元カレで友人コナーの影がちらつきある日喧嘩になり、倒れたコナーを放置したまま帰ってしまう。翌朝遺体となり発見され。。

丁寧にきらびやかで幸せな日々を紡ぎあげていく。正義感が強く、友人も多く、みんなからも信頼されている。裕福な家庭に生まれ育ち、家族との仲も良好だ。前半はリチャードと取り巻く環境を青春のきらびやかさと交差させしっかりと描写した後、後半はコナーの死を巡り180度トーンを変えて作品を引き締めていく。罪悪感と今まで紡ぎあげてきたものとの狭間で、揺れ動く男の心境を寄り添う音楽、ダークな色彩、閉鎖的なカメラワークでしっかりと描写することで観客も感情移入させられる。

父親との会話にも互いの葛藤を、絶妙な会話の間に忍び込ませ、泣き叫び一人孤独の中ただその罪と向き合うリチャード。皮肉にも日々は確実に流れていく様を適度に描写し、優等生の結末で十分に見応えがある作品として終われたであろう。

しかしそうはいかない静かなる結末に胸を抉られる。どちらの選択も過酷である。しかし自分に胸を張れない選択はいつかそれと向き合う日が来るだろう。向き合うなら早い方が良い。分かっていながらを彼のように何かしらの秘密を抱えて生きている人は多いのではないか。その結末は観客に静かながらも確実にメッセージを残してくれる。
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