emily

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のemilyのレビュー・感想・評価

3.8
グローバル企業がパキスタンで強引に粉ミルクを販売しており、それにより汚れた水で粉ミルクを溶かして飲んだ乳幼児たちの命を脅かしていた。セールスマンのアヤンはその事実を知り、たった一人企業を訴えようと立ち上がる。大きな壁、すべての人生をかけて戦う男の行く末とは・・

 実話に基づき、インドで撮影されている。インドの雰囲気や音楽に包まれ、家族の愛がしっかり根付く環境下で暮らすアヤンの成功を明るいトーンで見せる。本作は実態を映画化する事になり、その過程を見せていくという手法を取っており、それにより、より事実を客観的に、二重の層により見えない部分がしっかり見える仕組みになっており、観客に難題を何度も突き付けてくる。

 正義を掲げて立ち上がった男だが、その正義とはいったいなになのか?一番大事な存在である自分の家族を守るためには長い物に従うのは夫としての正義なのかもしれない。しかし男として人としての正義を掲げた時、必ず犠牲になるのは家族である。しかしそんな信念のある男だからこそ、家族はいつでも味方してくれ、その信念を貫く事を強く願うのだ。家族、特に妻の支えは大きい物だ。その深い愛は演者の表情からしっかり読み取れる。

 本作は観客の”人間性”を問う作品である。社会的に大きな問題でなくとも、生きていく中で何度も葛藤する自分の中の正義。正しいとわかっていなくても、組織の中で生きていく上でそれに従うしかない側面は幾度とあるはずだ。しかし自分の心は知っている。その正義は自分の心のがちゃんとしっている。

 天秤にかけられたとき人として自分自身は何が出来るのか。一人の力は微力であるが、自分が立ち上がれば必ずどこかに味方してくれる人は居るはずだ。誰かがやるだろうではなく、その誰かが自分であってもいいはずだ。いつだって犠牲になるのは弱い存在である。他人事として生きていけば楽なのかもしれない。しかしその積み重ねにより心に靄がかかり、”大切な物”が見えなくなってしまってる現代人にグサッと鞭をうつ作品である。感じたこと、心に刺さった熱い物を大切に、生きて行かなくてはならない。
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